インタビュー Vol.99
役が歌を奏でるようなミュージカル界 永久不滅のプリンス
浦井健治
昨年に引き続き今回はドリーム・キャラバン新潟公演にご出演いただきありがとうございます。ちなみに新潟には行かれたことはございますか
公演で行きました。劇場とホテルだけでしたが、ゆったりしていてとても空気がきれいだった印象があります。
学生時代はコピーバンドをやられていたそうですが、当時お好きなバンドは
SOPHIAさん、L'Arc~en~Cielさん、LUNA SEAさんが好きでした。
今回3月にリリースしたアルバム『VARIOUS』もSOPHIAの松岡充さんから提供していただいた「バナナココナッツセット」が収録されています。松岡さんイズムというか、言葉の紡ぎ方が突出していてすごかったです。松岡さんは今回MVにも参加してくださり、僕の大好きなアーティストであり、トップのロックスター様なので、曲を一緒に創り上げるという大きな夢が叶った“バナココ”は僕の宝物です!
19歳で芸能の道に進まれた浦井さんですが、何歳頃から音楽に目覚め、ミュージカル俳優を志したのでしょうか
いつというのははっきり覚えていないのですが、歌ったり身体を動かすことが好きだったので、ダンススクールに通ったり、色んなアーティストのライブを見たりしながら、沢山の刺激をもらっていました。
オーケストラをバックに歌われるときのお気持ちは
一音一音に魂がこもっている演奏は、オーケストラの皆さんが、きっと幼少時代から全ての情熱を賭けてきたからこその音だろうと思います。そのプロフェッショナルな方々の演奏をバックに歌えることに僕も心が自然と揺れるし、その時に醸し出される一体感はとても楽しいです。オーケストラの迫力はもちろん、僕の歌を何十倍もの豊かな音にして、歌詞から更にその歌の景色まで奏でてくれる。僕自身が歌うというより、その演奏を僕自身がそばで聞いていたくなるような、そんな感覚になります。
ミュージカル作品でもオケピでの上演はありますが
コロナ禍が大きなきっかけではあると思うのですが、オケピという文化が場合によってはカラオケになってしまったり、ある意味では時代と共に変化してきていると思うんです。
コロナの自粛期間中などに、外で練習しているかたを見かけたりすると、お仕事として演奏できる場があるということは当たり前ではなくて、演奏家の方々も僕らと同じように、パンデミックの時はかなり影響を受けていたんですよね。僕はドリーム・キャラバンには昨年も参加させていただきましたが、演奏される皆さんが、とても喜びを感じながら演奏されていたのを体感して、オーケストラの皆さんとご一緒できる貴重な時間、一期一会を大切にしたいなと感じました。
2000年『仮面ライダークウガ』でデビューされてからあらゆるジャンルの作品に出ずっぱりの浦井さんですが、2012年に蜷川幸雄さん演出のウィリアム・シェイクスピア作品『シンベリン』では初のロンドン公演(バービカン・シアター)にもご出演されていますね
やはりバービカン・シアターは、ロンドンでもし演劇をやっていたとしても簡単に立てるような所ではないので、凄く貴重な経験をさせていただいたと思っています。
蜷川幸雄さんが仰っていたことで「お前たちの後ろには後輩たちのレールがあるから、それを潰さないように...」板の上に立つものとして、エンターテインメントの世界に携わる責任として、本当にその通りだと思いましたし、それが蜷川さんからのメッセージだったのだと思います。
蜷川さんの演出はかなり厳しいというお声をよくお聞きしますが
印象的だったのはダメ出しをいっぱいしても「これはGiftだから」と仰っていて、それがわかってくると「あ!なるほどな」って思うのですが、そこにたどり着くまでには滅茶苦茶、厳しく言われることもありましたけど、それも全ては、蜷川さんからの愛なんだと思いました。
その時は阿部寛さんや、吉田鋼太郎さん、鳳蘭さんなどがいつも謙虚でありながらも、現場を盛り立てていらしたので、そんな諸先輩方の姿はとても勉強にもなりましたし、僕自身もそんな役者になりたいと思いました。
同じ2012年に結成されたStarS(井上芳雄、山崎育三郎、浦井健治の3人のミュージカル俳優によるユニット)のコンサートが翌年2013年11月11日 日本武道館にて開催されました。何がきっかけでStarsが誕生したのでしょうか
井上芳雄さんがある取材の時に3人でなにかやりたいね~みたいなことを言ってくださって、それが現実になったという経緯ですが、いま思えば愛に溢れる瞬間の連続でした。メンバーやミュージシャンの皆さんやダンサーさんとの信頼関係があったからこそできた特別なステージであり、貴重な時間でした。
井上さん、山崎さんなど、それぞれがお互いの公演を観劇にいくということはありますか
いまでも勿論、親しくしていますし、尊敬するお二人です!
ミュージカル『デスノート THE MUSICAL』夜神月役をWOWOWで放送されたときに拝見したのですが、浦井さんのビジュアルが今と全然お変わりないことに驚きました!(2015年と2017年に出演)
役者ですから色々な役で自分を高めていかなければと、いつも感じています。
あと、新国立劇場にて上演されたシェイクスピア劇の『尺には尺を』クローディオ役のビジュアルも『エリザベート』のルドルフ皇太子かと思うほど、似ていましたが
衣装の前田文子さんのお遊びもあったと思うのですが、時代背景をもとに一から作っていただく衣装なので、それがたまたまそういうふうに見えるのも面白いですよね。
お衣装を見比べたのですが、若々しさもそのままの浦井健治さんは永久不滅のルドルフ皇太子ではないかと思っていますし、また演じていただきたいと希望します!
ありがとうございます。自分では分からないですけど、そう思って頂けるのは嬉しいですよね。
『尺には尺を』クローディオ役と『終わりよければすべてよし』バートラム役のように、2作品をマチネとソワレで同時に上演するということは日本では初めてではないでしょうか
もしかすると、海外や違う座組とかではあったかもしれませんが、国内では、稀かもしれませんね。
その2役を1日のなかで切り替える脳のストレッチなど必要ですね
はい、もうみんなで命をかけて死に物狂いでやっています(笑)
健康管理に心がけていることは
アスリートと一緒かと思いますが、マッサージに行ったり、疲れは溜めないようにしています。
また台詞を言い続けることは声帯の筋肉を駆使している事にもなるので、お客様へ台詞をしっかり届けるために、喉のケアもしています。
ありがとうございます!!でも昨年もそうでしたが、相当無理をされて今回もスケジュール調整してくださっているのが分かりますので、本当に感謝しかありません
でもこのドリーム・キャラバンでしか会わないような特別な顔ぶれの集まりは贅沢な公演だな~と思います!
新潟公演でご出演いただく森崎ウィンさんとはご一緒したことはありますか
お会いしたことはありますが、舞台での共演はないですね。
新妻聖子さんとはミュージカル『王家の紋章』で共演させていただいています。
今年3月、日本初演のミュージカル『カム フロム アウェイ』(20021年9月11日の同時多発テロの裏でカナダにある小さな町で起きた驚くべき実話を基にしている5日間の物語)で12人の俳優が100人近くの役を演じ、ドラマが交錯するという100分間のドラマだそうですが、今回は濱田めぐみさんとも共演ですね
濱田さんには、とても良くしていただいています。居心地が良くてまるで親戚のような感じです(笑)
何役も演じることと、ハケることがないくらい舞台に出ずっぱりで、全員で一つの楽曲を歌ったりしながら、悲劇を悲劇としてだけではなく、実際に起こったことを語り継ぐために、人生の過程の豊かさ、もしくは偶然に出逢った人たちとの生きることへの意味の大切さをメッセージに込めていると思います。今はまだ歌稽古の段階ですが、12人全員で同じ方向を向いていることが大事で、そんな志も含めて、本作のプロデューサーさんはこの12人を選んだことと、12人で演じることの意味を『カム フロム アウェイ』の作品の中にメッセージとして組み込んでいます。人生は一寸先は闇かもしれないし、それでも生きていかなければいけない。そのことの大変さ、素晴らしさ、尊さ。多様性をこの12人だから紡げるのではないかという思いが伝わってきました。今回日本初演で、この俳優陣でやれることに、とてもやり甲斐を感じています。
この作品のビジュアル撮影を拝見してBGMの楽曲は軽快でノリノリですね
それぞれの役が背負っているものをその音楽で色んな生き様を表すことが重要な部分だと思います。
『カム フロム アウェイ』も昨年1月に上演されたミュージカル『キングアーサー』も日本初演というのは前例がないので、役作りの根幹といいますか、大変さはどんなものでしょうか
大変さというか、演出家が言われることを聞きながら、言われたことをやってみる。そして、プロデューサーさんと相手役の俳優さんやキャストみんなで作っていくという感じですね。
役者冥利に尽きるなと思うときはどんなときでしょうか
ドリーム・キャラバンのように作品の役を背負いながらミュージカル曲をソロで歌わせていただける瞬間です!
ミュージカル『ジキル&ハイド』より「時が来た」を東京公演から歌詞は様々な言語で、しかもリレーで歌っていただくのですが、新潟公演は浦井さんにぜひ!!と直々にお願いいたしました
今回、このような機会を頂き、光栄です。楽しんで歌わせていただきます。
今後の目標は
ドリーム・キャラバンに最多出演することです!(笑)
最後にドリーム・キャラバン新潟公演にご来場くださるファンの皆さまへのメッセージをお願いいたします
ドリーム・キャラバンはあまりご一緒する機会のない方との出会いだったりしますし、そのような場に参加させていただけることも、僕自身とても光栄で嬉しいです。この時間を大切に心を込めて歌わせていただきたいと思います。
浦井健治さんのヒストリーも描かれている『アシアト』を拝読しまして、浦井さんに関わる演出家の先生がユニークに意外な素顔を語っていらっしゃいました。
浦井さんは童話もお書きになり、初めたのは12~3歳の頃からだそうです。物語は、あたたかく優しい人柄が滲み出ていて、なんだかとても幸せな気持ちにさせられましたので、この本は浦井健治さんを知るための貴重な保存版とさせていただいております。
浦井さん曰く、舞台に立つ前に、一回全幕を通してセットと小道具にも触れて、一番後ろの客席まで行って戻るというルーティンを実践していて、そうすることで、お芝居を始めた時に日常のように演じることができるそうです。
煌びやかな舞台に立ち続け、毎日のようにスタンディングオベーションの喝采の中、常に礼儀正しく、先輩を敬い、謙虚な姿勢がみんなに愛される所以ではないかと思います。
ミュージカル『エリザベート』のルドルフ皇太子役は井上芳雄さんのあとを受け継ぎ、2004年からは2010年まで、多分、最多記録で演じられているのではないでしょうか。
デビュー24年目、今まさにミュージカル界の頂点に立ち、浦井健治さんにとって、今後もあらゆる役を演じ続けるための原点ではないかと思わされるほど、ルドルフ皇太子役は唯一無二です。
ミュージカル、リーディング、シェイクスピアなどのストレートプレイ、更には東京国際フォーラムホールAを満席にする単独コンサートやレコーディングなど、エンターテインメントの頂点を極める勢いは止まらない。ドリーム・キャラバンでは浦井さんの歌声を夢のGIFT BOXに詰めてその感動を皆様にお持ち帰りいただきたいと願っております。
追記:この度は元旦に発生しました能登半島地震で石川県、新潟県をはじめそのほかの地域でも被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。
出演者一同、皆様に少しでも元気を取り戻していただきたく、心を込めて素晴らしい音楽をお届けしたいと思いますので、ご来場をお待ち申し上げております。
浦井 健治
2000年『仮面ライダークウガ』敵の首領ン・ダグバ・ゼバ役で俳優デビュー。2004年にはミュージカル『エリザベート』ルドルフ皇太子役へ抜擢され、以降、ミュージカル、ストレートプレイ、映像と数多くの作品に出演。第22回読売演劇大賞最優秀男優賞、第67回芸術選奨文部科学大臣演劇部門新人賞など数々の演劇賞を受賞。
近年は舞台活動の他に、ナレーターや自らが描いたキャラクター“うらけん”がショートアニメとなり声を担当したり、自身のコンサート・ディナーショーなど、幅広いジャンルで活動の幅を広げている。
今後は、ミュージカル『カム フロム アウェイ』(2024.03 日生劇場他)、『モンパルナスの奇跡』(2024.06 よみうり大手町ホール)への出演を予定している。
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※本公演は各種感染予防対策を講じたうえで実施いたします。今後、政府・自治体・会場の方針によっては、対応を変更させていただく場合もございます。最新情報は当ホームページにてご確認くださいますようお願いいたします。