インタビュー Vol.88
 

高みを目指しダンサーからミュージカル俳優へと見事なる進化

上口耕平

 

 

 

上口さんは子供の頃からダンススタジオに通い、マイケル・ジャクソンの影響を受けられたとのことですが、それは何歳頃ですか?

僕は和歌山県出身で、6歳からダンスを始めたのですが、小学2年生くらいの7歳か8歳の頃に、当時通っていたダンススタジオの先生がマイケル・ジャクソンの映像を見せてくれたんです。それが「Remember the Time」という曲で、「なんだこれは!!」という全身に電流が走るような物凄い衝撃を受けました。僕がレッスンしていたのはジャズダンスだったのですが、今までに見たこともないようなダンスで、それから僕の人生が変わりました!
「Thriller」の頃はまだ3歳だったのでリアルタイムでは見れていないのですが、映画『THIS IS IT』は何回も観に行きましたね。マイケル・ジャクソンとの出会いによって、僕のダンスへの取り組み方が全く変わりました。ヒップホップや、マイケルがやっているようなポッピングスタイルを知って、どんどんのめり込んで、ビデオを買ってもらい夢中になって観ていました。今でこそ、子供に教えるスタジオは沢山ありますが、当時、和歌山ではそういうスタジオはひとつだけで、しかもジャズダンスしかなかったので、ひたすら家でビデオが擦り切れるほど観て独学で練習していました。
中学生になってからは、森山未來さんを教えていた先生がクラスを持っていた大阪のダンススタジオに通いました。そこでは中学3年生までジャズダンスを習っていました。森山未來さんは東京オリンピックの開会式でもダンスを披露されていましたが、ご自分の世界観を持っていて、素晴らしいダンサーでもあり、アーティストでもあるので僕の憧れの方です。
 

 

サミー・デイビスJr.もお好きとか

マイケル・ジャクソンが尊敬しているエンタティナー、サミー・デイビスJr.の持つファンクな雰囲気が大好きで、彼の「Mr. Bojangles」のような物語のある歌を、いつかタップを踏みながら歌ってみたいですね。
僕のパソコンはマイケルとサミーが二人並んだツーショットの写真を壁紙にしています。それほど大好きなアーティストです。
 

ダンスチーム「DEVAKINGS」でイベントなどにご出演されていたそうですね

東京で高校時代に組んだダンスチームで、相方のSHINZOは今もダンスを続けています。今でいうスタイル・ヒップホップとか、ストリートジャズなのですが、当時はそういうのがなかったので、コンテストではフリースタイルと呼んでいました。
 

 

 

ダンサーからミュージカル俳優の道へ転身されたきっかけは?

もともとお芝居にも興味があって好きだったのですが、とあることがきっかけで、高校生の時にテレビドラマ『ごくせん』でデビューしました。
その後は大学で学業に専念していましたが、昔クラブ時代に知り合った振り付け家のair:manさんに、ミュージカルの振り付けをするからオーディションを受けてみない?と声をかけていただいたのがきっかけです。「え!ミュージカル?」と、僕にとっては遠い世界だと思っていたのですが、オーディションを受けたら受かって、ダンサーとして出演させていただきました。やってみたら、凄く楽しくて、益々興味を持ち始めて、ミュージカルは作品によって音楽やダンスのジャンルも違うので、本当に色々な世界があるんだな~ということを知り、気づいた時にはすでにのめり込んでいましたね。
 

最初に出演されたミュージカル作品はなんですか

大学生の時ですが、2007年に西川貴教さん主演のブロードウェイミュージカル『ハウ・トゥ・サクシード ~努力しないで出世する方法』に出演させていただきました。
 

好きなダンサーはいますか

沢山います。YOSHIEさんはずっと憧れでしたし、s**t kingz(シットキングス)はメンバーのOguriとも昔ユニットで一緒に踊ったりしていて、この4人はいつ見ても好きですね。
 

 

今までやってきて印象深い作品や配役は

すぐに浮かんでくるのは『タイタニック』のハロルド・ブライト役や『RENT』のエンジェル役です。

 
ミュージカル『タイタニック』2018年 ハロルド・ブライド役
 

ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』もコロナ禍の中、お稽古は大変だったのではないでしょうか

演出家のマリア・フリードマンさんとは、毎日オンラインでお稽古していました。時差があるので、日本時間に合わせるとイギリスが早朝5時だったりとか、いろいろな壁もあります。『RENT』もそうでしたが、海外演出の場合は今はリモートが主流なので、もろもろ大分改善はされてきていると思いますが、やはり大変です。
 

ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』2021年 タイラー役

 

特に親しくしている俳優さんはいらっしゃいますか

加藤和樹さんは先日も彼のライブにゲストで出演させていただいたのですが、公私共に親しくさせていただいています。あと同年代の廣瀬友祐さんもそうですね。お互いの弱さや優しさを理解し合えているので、良く連絡は取り合っています。
 

3人で一緒にお酒を飲みに行ったり?

いえ、二人とも飲まないんですよ。なので普段は結構真面目な話をしています(笑)お酒は僕もそんなに強いほうじゃないので、お稽古のあとに自分をリセットする意味で、ひとり家でひっそり飲む程度ですね。他にもダンスを観たり、テレビでお笑いを観たり、自分の時間は大事にしています。
 

先日の明治座さんの『SCORE!!』では夢咲ねねさんとも共演されていらっしゃいましたが、上口さんは学級委員長の役で、ピッタリでしたね。

実は小学校、中学校、高校で学級委員長をやっていました。中学の時は生徒会長もやっていました。なので役作りはすんなりいけましたね(笑)
 

アメリカン・ハイスクールの先生役の中川晃教さんとはいかがでしたか

昔からお世話になっている方ですが、今回が始めての共演で、目の前でパフォーマンスを見てめちゃくちゃ刺激をもらいました。歌に対するアプローチとか音楽に対するこだわりとか、凄く学びました。
 

 
 

今後、演じてみたい作品と役がありましたら教えてください

とことん悪い役に挑戦してみたいですね。僕は陽気なイメージに思われがちですが、もともとオタク気質で、一人でじっと考えることも好きなんです。陰の要素もありますね。あまりそういう印象をもたれていないので、良い意味で僕自身のイメージを壊して、役者として幅広く演じることができたらいいなと思います。
人物としてはシェイクスピアの「オセロ」に今とても興味があります。ストレートプレイにも挑戦していきたいです。
 

ライブシリーズ『The Song of Stars』では初のCOTTON CLUBご出演おめでとうございます!!

リハーサルも終わって本番に向けての準備中です。ダンスも踊りますし、新たに挑戦する歌もありますので、楽しみにしていてください!
 

COTTON CLUB『The Song of Stars』2021年7月31日、8月1日

 

10月7日からは『ドン・ジュアン』のドン・カルロ役での再演もありますね

主演は藤ヶ谷太輔さん(Kis-My-Ft2)で、僕の演じるカルロはドン・ジュアンを厳しく管理しつつ、頼りつつという存在です。彼の生き様を見ながら自分の生き方を考えるように作ってきましたけど、2年経ってお互いの考え方も変わってきていると思いますので、そこを稽古場でどのように感じられるのか、そこを感じた上で、どんな関係性がまわりの人たちも含めて生まれてくるのか、新たに新作を作る気持ちで稽古に挑もうと思っています。だからとても楽しみです!
 

今後の目標は

ミュージカルだけでなく、ライブ活動もしていきたいですし、何よりも役者として「エンターテインメントを続けていくこと」が一番の目標です。
応援してくださっている皆様が楽しみにしてくださることは何かな?と考えながら、皆様にenjoyしていただくこと、今できることを精一杯やって、それが次に繋がることを信じていくというmindです。
 

今回のテーマは「元気の出るラブソング」ですが、生涯ずっと歌い続けていきたいと思う歌はありますか

Donny Hathawayの「For All We Know」。実はCOTTON CLUBのライブで初めて挑戦する曲なのですが、小学生の頃に聞いて好き過ぎて、ずっと歌いたいと思い続けてきました。
あとは高校生の時に自分で作詞をしたオリジナル曲で「GOLD EXPERIENCE」、日本語では「黄金体験」という曲です。自分のステージに対する熱い想いをひたすら歌詞に書いた歌ですが、この曲も歌っていきたいですね。
 

 

皆さんに元気の出るメッセージをお願いします

自分のなかでは歌は全てがラブソングだと思っているので、皆さんに元気の出る愛の歌が届けられるよう、心を込めて歌わせていただきます。会場でお待ちしております!!
 

知性の中にユーモアも交えて物静かな語り口でお話しくださいました。実は私も上口さんと同じくマイケル・ジャクソンに影響を受けて現在に至るという感じなのですが、マイケル・ジャクソンがリスペクトしていたチャールズ・チャップリンの言葉で「喜劇とは距離を置いた人生。悲劇は身近な人生。」というものがあります。俳優は様々な悲劇や喜劇を演じられるお仕事です。
先日のCOTTON CLUBライブではシンガー上口耕平さんの未知のパフォーマンスを見事に演じました。インタビューでも語ってくださいましたが「For All We Know」も素晴らしかったですし、ジャズ・スタンダードナンバーの「Night and Day」や「Lover Come Back To Me」も歌いこなすというチャレンジ!!
上口さんにリクエストです!サミー・デイビスJr.の60歳の記念バースディにマイケル・ジャクソンが歌っている「You Were There」という曲があるのですが、この歌声も心震えます!ぜひいつの日か上口さんに歌っていただきたいです。そして本領発揮のダンスはテクニックだけでは表現しきれない魂が宿っている。まるで全身エンターテインメントのような底知れぬ技を隠し持っていたことを知りました。
正に上口さんの『The Song of Stars』はパフォーマンスの金メダル級!で “enjoy”しました!そして実はまだ隠し技がありまして、今回のLOVE SONG COVERSではここでしかご披露できないSong & Danceをお魅せいたしますので、どうぞご期待ください!!


インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:Ami Hirabayashi
取材協力:ZEAL STUDIOS
許可なく転載・引用することを堅くお断りします。

上口耕平

和歌山県出身。学習院大学文学部卒業。2002年、ドラマ「ごくせん」(NTV)レギュラーで俳優デビュー。高校時代から数々のダンスコンテストに入賞、キレのあるダンスには定評がある。近年はミュージカルを中心にジャンルを問わず活躍中。主な出演作に、『メリリー・ウィー・ロール・アロング』、『屋根の上のヴァイオリン弾き』、『RENT』、『Defiled』、『ウエスト・サイド・ストーリー Season2』、『アンクル・トム』(主演)、『ドン・ジュアン』、『BACKBEAT』、『タイタニック』、『FUN HOME』、『天使にラブ・ソングを』など。本年夏にCOTTON CLUBにてソロライブ「The Song of Stars」開催。

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 ※本公演は、新型コロナウイルスの感染拡大状況に伴う、国や自治体から発布される制限事項に従って開催いたします。最新情報は当ホームページにてご確認くださいますようお願いいたします。