インタビュー Vol.80
妖艶な美しさとダイナミックさでステージを華やかに彩るスター
沙央くらま
美意識が徹底されていて素晴らしいですね。
宝塚在籍中に毎日2000人以上のお客様の前で舞台に立たせて頂けたことは、貴重な体験でした。卒業後も宝塚時代の経験をいかして、「魅力的に生きる」をテーマにし、ブログなどでも美について発信しています。何か発信する時には威厳がないと説得力に欠けてしまうと思っているので、美のテーマはこれからも追求し続けたいと思っています。
周りのひとたちを明るくするパワーを感じます。
それは、日々色々ありますが、マイナスの気持ちになったとしても、それはプラスになるためのマイナスであったり…、人間は両方持ち合わせていると思うので、「倒れる時は立ち上がるために倒れる」となるべくプラスに考えるように心がけています。
宝塚歌劇団の男役、女役の希望はご自身で選択できるのでしょうか。
身長の基準で選べるのですが、だいたい166㎝以下だと、娘役だと高めで、男役だと低めになるので微妙なラインですね。自分の趣味だけでは選べないですし、演出して下さる方や大勢の方々があっての宝塚歌劇団ですので、劇団サイドの方々との話し合いで決めます。
私はどちらでも演じられるように髪をロングのお団子頭にして試験を受けたのですが、試験の時に、男役と女役のどちらをやりたいの?と質問されて、「男役をやりたいです」と言ったら、私の声は割と低いので、試験官に「その声だと男役だね」と笑われ、晴れて男役で受かりました。
でも、卒業前は特に演出家の小池修一郎先生に女役も演じなさいと言っていただき、女性の役も頂くようになりました。
話題性として、男女両方を演じるひともいましたが、私の場合はダイナミックな力強い女性を演じる時など、私が演じさせて頂く機会を頂いていました。そういった意味でもとても勉強になりましたし、良い経験をさせてもらえたことに感謝しています。
立ち振る舞いなど演じ分けることの難しさで特に苦労したことは。
役づくりは男役としての振る舞い方などを徹底して演じてきた私にとって、卒業してからの私は、普段の生活のなかで女性としての振る舞いが結構大変でしたね。最初はスカートに慣れなくて、女性の歩き方に慣れるまで苦労しました(笑)
沙央くらまさんの芸名の由来は。
沙央(さおう)はシェイクスピアという意味があるのですが、両親はもともとシェイクスピア・シアターのカンパニー在籍中に出会い、結婚し、カンパニーを卒業したんです。そのカンパニー時代、全戯曲を翻訳された小田島雄志先生が書き下ろしたものを両親が演じていたそんなご縁から、小田島先生に私の沙央という、姓をつけて頂きました。シェイクスピアの日本訳が「沙翁」で、「央」は、本当は「翁」なのですが。「翁」ですと、年を召したイメージになるので、中央の「央」にしていただきました。「くらま」は、姓が漢字2文字なので、名前は平仮名がいいかなと感覚的に自分でつけました。
恵まれた環境で育ち、素晴らしい演劇一家ですね。
小さい頃から家族でシェイクスピアの台本を読んだりしていましたね。弟はいまボストンでオペラを歌っているのですが、気がついたら芸術一家になっていました。本当に沢山のことを学べる環境を頂けたのは財産ですね。
宝塚を初めて観劇したのが、真矢みきさん主演のブロードウェイミュージカル『ハウ・トゥ・サクシード』という舞台だったのですが、感動して、すぐに自分もここに入りたいと思い、両親にお願いして、試験を受けました。
初舞台は『ベルサイユのばら2001』という王道の作品だったのですが、社会現象にもなっていた『ベルサイユのばら』は入団前に観ていなかったため、「あ〜!これがあの有名な『ベルサイユのばら』なんだ!」と初舞台で知ったような私です(笑)
インスタに赤ちゃんの頃の可愛いお写真がアップされておりましたが、貴重なお写真を撮影して残してくださっているご両親はありがたいですね。
はい。父は9年前に亡くなっていますが、母は元気に父のやっていたお仕事を引き継いで頑張っています。両親にはいつまでも感謝しかありません。
退団されて今年で2年ですね。宝塚歌劇団は沙央さんにとってどんな世界でしたか。
17年間在籍していましたが、学校生活も入れたら約20年いたことになりますね。宝塚歌劇団は、どこにもない華やかな世界で、そこにいられた時間が私にとっては一生の財産だと思います。振り返れば沢山闘ってきて、その結果いまここにいるので、闘ってこられたことに感謝しても仕切れないほど感謝ですね。本当に楽しかったです!!
歌、ダンス、お芝居のどれがいちばんお好きですか。
いままで言葉の力を信じてやってきたので、ただ歌えばいいとか、台詞を言えばいいとかではなく、きちんと伝えるということが大事だと思います。ラジオのお仕事もさせていただいたり、セミナーをやったり、喋ることの多い環境ですので言葉を大切にしたいですね。例え歌えていても言葉の意味が伝わらないと意味がないな〜と思いますね。
いちばん思い出深い作品とその役は何ですか。
私がシェイクスピア作品に初めて出演させていただけたのが『ロミオとジュリエット』の乳母の役だったのですが、その時、父が闘病生活中で、乳母の役が決まったときに誰よりも父が喜んでくれて、この舞台は這ってでも観に行くと言ってくれ、本当に這って観にきてくれたんです。そしてこの作品が終わってから父は亡くなったのですが、乳母役は、そんな父との想い出が深く、私自身の挑戦でもありました。この公演中に東日本大震災も起きたり、色んなことが重なったこともあり、そんな中、舞台に立つ事で、自分にとって大きな転機となり大切な学びにもなりました。
宝塚歌劇団ではシェイクスピア作品は少ないのでしょうか。
没後400年記念で『シェイクスピア』という作品を公演したのですが、その時に小田島雄志先生がスーパーバイザーで入られて、シェイクスピア・カンパニーの主役を張る役者のリチャード役を頂いて演じたことがあります。脚本は生田大和先生で、劇中劇でシェイクスピアの様々な役を演じることができたので、とても楽しくて忘れられないですね。
退団後も宝塚歌劇団の舞台はよく観劇されますか。
仲間がどんどん卒業していくので、皆んなが在籍しているうちに沢山観に行っておきたいので、特に月組、雪組の舞台はよく観にいきますね。
仲良しのかたはどなたですか。
同期生では、早霧せいなさん、龍真咲さん、上級生の水夏希さん、北翔海莉さん、などお世話になっています。現役の子たちも仲良しですね。今度卒業する望海風斗さんや、珠城りょうさんもみんな仲良しです。真矢みきさんは私にいつも大切なタイミングをくださる大先輩です。その他、卒業してから一路真輝さんと舞台でご一緒させていただいて、こうして卒業しても宝塚という絆でご縁が繋がっていく事が有難いですね。
昨年、シアタークリエの『CLUB SEVEN』を観に行かせていただきました。
ありがとうございます!宝塚のプロデューサーに「こんなに踊れたの?!!(笑)」って言われました(笑)
宝塚を退団すると踊る機会が減っていくので、あれは本当に大変でしたがとても楽しかったですね!!
ミュージカルとストレートプレイとどちらがお好きですか。
どちらも違うので、どちらも好きですし、ファンの皆さんにまた観たいと思ってもらえるような作品と出会えることが大事ですね。ドラマとしてメッセージ性があるものが好きです。
究極のLOVE SONGはなんでしょうか。
人に対しての優しさだったり、真心を伝えられる曲。宝塚でディナーショーをやらせていただいた時に私のオリジナル曲『愛の花』を歌いましたが、愛とは目には見えないけど、人それぞれに色んな表現や形があると思います。様々な愛の形が共鳴し、思いやりを持つことが愛なのかな〜と思いますね。
ロマンチスト派ですか?
O型で大雑破なところもあるけど、意外と冷静で現実的な部分もあり、でもいつも夢を描きながら生きているので、ロマンチスト派ですかね〜難しいですね、両方のバランスをうまく取りながら生きていると思います。
今回は始めてご一緒されるアーティストさんばかりだと思いますが。
そうですね、夢咲ねねちゃん以外のかたは皆さん初めてです。今回、共演者の皆さんの歌が聞けるのは本当に楽しみですね。
ファンの皆さんにひとことお願いします。
愛というテーマは世界を超えてひとつになれる。そんなテーマではないかと感じています。愛とは、深くて本当に素晴らしいものだと思います。今回そんな愛がテーマのコンサートに参加させて頂ける事が嬉しいですし、音楽を通じて発信させて頂ける表現者として、いま世界中、そして皆さまが大変な中、少しでも元気な気持ちになれるよう、愛に溢れる和らぎの心をお届けできるように歌わせて頂けたらと思います。
ぜひ、世界中のLOVE SONGを聴きにいらしてください。お待ちしております!!
言葉はひとを作る。音楽はひとの心を作る。自信こそ最高の武器!!コマさんの愛称で親しまれている沙央さんはラジオ番組のパーソナリティもされていて、言葉の滑舌も明瞭で、英知に溢れたトーク力で素晴らしいアーティストさんだと思いました。
私も学生時代、シェイクスピア作品をよく観劇していましたが、初めて観た作品は、真帆志ぶきさんと細川俊之さんが演じるミュージカル『ヴェローナの二紳士』でした。沙央さんのように、演劇が生活の中に常に存在している環境で過ごされるなんて、私からみたらまるで夢のようです。
沙央さんの周りはいつも元気な笑いに満ち溢れていて、はじめて取材でお会いした瞬間、なぜか久しぶりに再会したお友達のような気さくさを感じました。同じ日に一緒に取材していただく共演者の皆さんに鯛焼きの差し入れを持ってきてくださり、そんな細やかな人柄があたたかくて、インタビューをさせていただく前の緊張感が一気にほぐれ、沙央さんの魅力に吸い込まれてしまいそうになりました。今回のLOVE SONGでは、男役? 女役?どちらで魅せてくださるのか、キラキラと眩しい輝きのオーラを放つ沙央さんが楽しみでなりません。
インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:Ami Hirabayashi
ヘアメイク:渡部圭依子
許可なく転載・引用することを堅くお断りします。
沙央くらま
シェイクスピアシアター出身の俳優を両親に持ち、幼い頃よりピアノや絵画、歌唱など、芸術の英才教育を受けて育つ。
2001年宝塚歌劇団に入団。宙組「ベルサイユのばら2001」で初舞台を踏み、雪組、月組、専科に在籍。老若男女、幅広い役柄を見事に演じきる高い演技力と歌唱力を持った男役スターとして活躍。2018年2月に惜しまれながら宝塚歌劇団を退団し、現在はテレビ、映画、舞台等で多才派女優として活躍中。2019年は難川実花監督の映画「DINER」に出演したほか、ストレートプレイ「花の秘密」での主演、「ラヴズ・レイパーズ・ロスト〜恋の骨折り損〜」や「ELF The Musical」にてヒロインを務める。
※本公演は、新型コロナウイルスの感染拡大状況に伴う、国や自治体から発布される制限事項に従って開催いたします。最新情報は当ホームページにてご確認くださいますようお願いいたします。