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インタビュー Vol.51
しなやかに、鮮やかに、時には扇情的に鍵盤を操るジャズ界の美魔女
高木里代子

●ピアノを習っていらしたそうですが、何歳から始めて、きっかけはなんだったのでしょうか。

実は母がクラシックピアノをずっとやっていて、昔ピアニストになりたかったらしいんです。それもあって、私と姉は近所のピアノの先生に教えてもらうようになって、それが4歳の時ですね。ドラクエとか弾きたいものをやらせてくれる先生だったのですけど、「この子は自分で作ることをやらせたらよい」と言っていたらしいです。

●小中高まで?

高校1年ぐらいまでですね。

●クラシックではなく、ジャズをやろうと思ったきっかけは?

ヤマハのピアノ教室に習い始め、そのシステムが高校1年ぐらいまでで、その先は自由にやっていいという内容でした。そして、高2の時に、9・11の事件を夜中にテレビを観ていて、全身にアレルギー反応が出てしまって、翌日から学校へ行きたくないと思ったのと、本気で世界は終わると思ったので、学校へ行く意味がないと、放浪の時期が始まって(笑)。受験しようと思っていたので塾へは行っていたのですが、学校へ行かずに放浪していました。母が、学校へ行かなくてもいいから何かしなさいよ、と。ジャズが好きだったのでヤマハにジャズの先生がいるのですけど、それで習いに行ったのが最初のきっかけです。

●9・11がある意味きっかけだったのですね。

なんとなく出会ったというか。最初はジャズ・ピアニストになるなんて思ってもいなかったですね。最初はあまり面白いと思っていなくて、レッスンの直前に少し練習するぐらいでしたね。23歳ぐらいまで習っていました。

●大学時代からジャズクラブで弾いていたそうですが、最初にステージに立ったのはどこのライブでしたか。プロになろうと思われたきっかけはなんでしょう。

いつもきっかけが純粋なんじゃないですけど、大学生の時に10歳年上の彼氏がいまして、酷いことをしたことがありまして…。彼がいつも忙しくしているので、「仕事と私が、どっちが大事?」みたいなことを言っちゃったんです。さらに、仕事じゃないのであれば私と一緒に旅に出てと(笑)。結果的に、仕事を全てほっといて、一週間ほど旅に出まして、河口湖や山中湖など色々行きました。本当に仕事をぶっちぎって行ったのでさすがにヤバイと思い、とりあえず自宅に戻ったのです。彼は携帯電話を自宅に置いて旅に出ていたので当然着信やメッセージがたいへんなことになっていて、仕事の半分はクビに…。私は大学生だったので、授業をさぼった程度なのですけど、彼は仕事ですからね。彼が仕事がなくなったので私も働こうと思って。当時アンナミラーズでバイトしていたのですが、旅のせいでクビになったので、とりあえず手あたり次第にバイトを探して電話かけたり色々していたのですが、前に新宿のJAZZ SPOT Jで飛び入りした時に、マスターの幸田さんが「機会があったらいつか挑戦してみたら」と言ってくださったのを憶えていて、それで連絡して、幸田さんに懇願して出させていただくようになり…。二十歳の時ですね。幸田さんにはこのことをまだ話していないけど(笑)。

●そうなんですね、その彼のためにという想いが(笑)。

責任感を感じて…。相手を振り回しちゃってゴメンと思って(笑)。

●壮絶ですね。でも、そのことがあって今のジャズにつながっていて、大恋愛だったのですね。

金髪で舞い上がっていましたね。最近はそれに戻りつつありますけど(笑)。なんだろう、気持ちが入って気合が入ってくるときっていつも髪に色を入れるのですよ。黒にすると気持ちが落ちる。テンションをあげる意味もありますよね。

●水着がアイコンになってますよね。

あれは狙ってやっていましたけれど、普段から胸が見えそうな服は着ていますよね。自然な流れで、ジャケットの撮影もエイベックスの担当の方と相談して決めましたが、何も抵抗も違和感もなかったですね(笑)。

●そこが潔いというか。ブログなどでは、ご自分のことを「オレ」とか「僕」とかの表現をされていますが男前なんでしょうか。

ほんと自然なんですよね。何か狙っているわけでなく。自分の居心地を考えたときに、自然と出るのですよね。ライブで演奏が終わったときに、「有難うございました、俺さ~」ってなるんですよね。なんだろうね、俺が弾いている、感じなので(笑)。歌の歌詞に「僕」と書くと良い雰囲気だとそいうのは一切なく、自然と出てくるのが、「僕」、「俺」であり、「私」もありますけど。あとは「高木」ですね。なんか、女のコっていう感じがダメなんです。

●ステージでは、とても女性らしい衣装ですけどね。

自分でも「ちぐはぐ」かなと思うのですけど、全て狙っているわけでもなく、着たいものを着ているし、話したいことを話していますね。

●そのギャップが面白いですよね。妖精のような恰好をするのですけど、俺様みたいな。

自分でやってみたいことをやっていますね。髪の毛にしても。

●毎回コスチュームが楽しみになんですけど、衣裳部屋に衣装はどのくらいあるのでしょう?

溢れかえっていますね。一回印象的なものを着るとまた着ることができないので、貸衣装の時もありますよ。買うよりも安いですよ(笑)。それのほうが1回1回楽しんでもらえるので。

●着こなしも素晴らしいですよね。先日もピカピカしていました(笑)。

友達が電飾系小物や衣装などのクラブ系グッズの店をやっていて、彼女が色々な衣装を仕立ててくれるときもあります。衣装は狙ってますね。こういう角度で弾いていると身体のラインが綺麗かなとか(笑)。立ち弾きで、この角度で見える見えない、とか(笑)。

●ジャズってお酒飲みながら、タバコふかしながらという不健康で根暗で難しいイメージに捉えられがちですが、里代子さんがジャズ界を改革してくれましたね。

私は好きですけどね。その湿気った感じ。それはそれで文化として好きです。でも私はメディアには「その文化を壊したい」とか「変革するのが私の役目」だとか言っていましたけど、実際はやりたいことをやっているだけなんですよね。自然にやっているという。それをそのように評価されてもいいかなという感じなんですよ。

●見た目だけではなくて、まずは実際の超絶なピアノ演奏を聴かせたいと思いますね。

偏見がありますよね。女性がライブに来てくれなくなるのでは、客層が狭めるのでは、など意見があったりしますけど、でも自分としては、そこまで意識してやっていくのが良いとも思えなくて、自分の流れといいますか、ある程度ナチュラルにやっていければと良いと思っています。

●ところで、里代子さんはファンの間ではなんと呼ばれているのですか?

「リヨちゃん」、「高木」、「ジャズ美」、「パイパイジャズ美」ですかね。「パイパイジャズ美」は、テレビ出演したときに有吉さんに名付けてもらいました(笑)。

●ファンクラブ“Riyoko's Room”はほぼ男性?ライブハウスにいくと男性客が多いですよね。

ファンクラブは殆ど男性ですね。他の方にも同じことを言われたことがあって、とあるマダムが、「おじさまが沢山いすぎて、居心地が悪いときもある」とか。それは考えないといけないと思ったことがありまして、逆に「女性限定ライブ」があっても良いかなと計画中です。女性ピアニストの方がよくライブに来てくれて「好きです」と言ってくるので、そういうのも嬉しいですよね。自分が男系なので、女の子が好きだったり。おじさまキラーに見られるけど、本当は違うのですけどね。

●熱狂的なファンの方が多いですね。

凄く有難いですよね。そういう方がいらっしゃっているから、毎回ライブが楽しくなりますし。

●ライブなどの動画のアクセス数がハンパじゃないですが。

動画もこういう弾き方をすれば再生回数が上がるだろうとわかってやってます(笑)。世界的に良いミュージシャンが素晴らしい演奏をしているのに動画が観られていない、というのが凄くもったいないと思っていまして。動画は、誰かのためにというより自分のためにやっていますね。

●リー・リトナーとの共演もありましたが、国内外で影響を受けたジャズ・ミュージシャンはいますか。

ピアニストでは一番崇拝しているのはブラジル出身の金髪のイリアーヌ・イリアス。ライブもビジュアルも好き、何もかも好きです。オムニバスCDの中でこれは好きだと聴いていたのですが、ある時イリアーヌのことを調べたら、こんな美人が弾いていたのか!と(笑)。それからイリアーヌのことを研究して、コピーとかもしています。リー・リトナーがイリアーヌと共演しているので、リー・リトナーに会った時にこのことを伝えたら、「彼女に伝えてくれておくからライブへ行ってみな」と言ってくれて。それでブルーノート東京のイリアーヌ公演へ行ったら、彼女が気さくに会って話をしてくれて、一緒に写真を撮りました。「(写真を)リーに送っておくわね」って言っていたけど、送れていなかったようで(笑)。いつか送ってもらう!あと、影響を受けたという意味では上原ひろみさんですね。あの早ワザとかは観て勉強して私の演奏にも活かされています。尊敬しています。

●ジャンルレスにやってこられて、クラブ・ミュージックにも傾倒していって。

高校の時にクラブ・ミュージックをよく聴いていて、DJ EMMAさんの「EMMA HOUSE」を聴いていて、あれってジャズやラテンの要素が沢山入っていて、家でHOUSEを聴きながらピアノで被せて遊ぶようなことをやっていましたね。ジャズのインプロもそこで出会ったという。そのあとハウス・ユニットのインナー・シティ・ジャム・オーケストラと出会いまして、自分がやろうと思っていたことがビンゴだったのでメンバーとして演奏するようになりました。そこからジャズとクラブを行き来するようになりました。クラブも行っていましたね。

●以前はホテルオークラ東京でもピアノを弾いていたそうでうね。その時はイケイケではなく清楚系ですか?

6時半から9時半まで綺麗な衣装を着て、髪はハーフアップしてクラシックや映画音楽とか弾いたあと、夜中はクラブでテキーラをあおりながら、コルセットを着てキーボードを弾いていたりして、そのギャップを楽しんでいた時もありましたね(笑)。24歳ごろ、やりたいことを集めていたらそうなっちゃって。

●そして、度肝を抜いたのが東京ジャズの水着での演奏!

「行くところまで行ったな、俺」と思いましたね(笑)。あれはエイベックス内でマネージメントの皆さんと話題を作ろう!という事になって、おおげさなぐらい胸を寄せておいてと。ノリノリでやってましたけど(笑)。「乳フェイス」のキャッチはエイベックスの宣伝担当が考えたのですけど「ナイス・アイディア!」と思いましたね。

●健康的な躍動感に溢れ、若さと美しさを持ち合わせて、女性が憧れる女性といいますか。

なんか勘違いされやすいですよね。「もっとオンナ、オンナ(女性らしい)な方だと思っていました」とか。実際は違うのですけど。

●健康管理はされていますか。

ヨガやったり、歩いたりしていますけど。ジムはたまに行っているくらいで。時間帯が夜の活動が多いし、ライブがハードなので結構へとへとになりますよね。昨夜もライブハウスで指の爪を痛めて。

●本当にいつも楽しさが弾けているのですが、壁とか、落ち込むことはないですか?

超根暗ですよ(笑)。病み期は病んでるし。アップダウンは激しい!落ちるところまで落ちると髪染めて復活するのですよ(笑)。復活早いかも。泣きすぎて顔がやばいときがありますよ。

●それを聴いてなんか安心しました。年頃の女の子なんだなって。

年頃ではないですけどね(笑)。ある日、凄く落ち込んだ時にライブをする日がありまして、マスクをして、普段着ないような長袖を着て、MCもほとんど無く演奏しました(笑)。でも、その演奏も今までにない感じで良かったという意見を頂きまして。心が無になると欲がなくなる、と言いますか、元気のないときは濁りがなく、力が抜けてピアノを弾ける。それはそれで良かったんだと。その時はその時だなと思いました。落ち込んでいる時も、どこか身体が痛い時も、どんな時でも演奏するべきなんだって。結局、ピアノを弾いているのが居心地よいのでしょうね。

●「ザ・デビュー」のMVも素晴らしいですね。これだけでも別に販売できそうなほど、ハイ・クオリティで、ユニークです。これはどちらで撮影されたのですか?

サイパンです。全部サイパンです(笑)。夕暮れとか凄く綺麗でしたね。砂浜も白くて。作詞作曲、打ち込み、など全部私がやっているので、音楽の制作費よりもPVの方にお金かかっているような感じですよね(笑)。サウンドがバラエティに富んで楽しいアルバムになりました。

●ジャズ界を明るくしてくださっていますよね。どうしても型にはまったものが多い中、自分でプロデュースする能力に長けてらっしゃるのでジャズ界を改革していってもらいたいですね。

誰もやらないから自分でやっている、ということから始まって(笑)。先ほどとかぶりますが、メディア向けにはジャズのためにと言っていますけど、たまたまジャズのインプロができて、作曲もできる、たまたまジャズが出来ているという感覚ですね。例えばロバート・グラスパーを観ていると、クールなことを追求したらああなったという気がする。ピアノを弾けるからピアニストとして活動しているといいますか。海外のアーティストってポップな人たちもジャズやってもうまいし、ピアノもみんなうまいという方が多いです。レディ・ガガもそうですよね。私は、そういうものを目指したいです。あと、イリアーヌを目指すというよりも、ピアノ界のレディ・ガガになりたい!もっとジャズのことを言うべきですけど(笑)。

●これからチャレンジしたいことはなんですか?

いっぱいありますけど、ビッグバンドとかオーケストラとか壮大なものをやりたいですね。打ち込みを追求していて、ロジック(シーケンスソフト)も10にアップデートして勉強していますし、例えばオーケストラや打ち込みを同時にできるようなライブをしたいですね。また、オリジナルな衣装を超大掛かりに何かしたい。サマソニに出たいですね。ウルトラにもでたい!

●当協会のサマージャズは、昔は日比谷野音でやっていたいのですよ。台風とかで大変な時もあったりして。そのあと、日比谷公会堂になり、改修に入るということで、昨年から文京シビックホールになりました。

夏の野音は最高ですね!

●ファンから沢山のプレゼントをいただくと思いますが、貰って嬉しいものはなんですか(笑)。

えーと、キーボード!(笑)もともとノードエレクトロを使っていたのですけど鍵盤がぶっ壊れてしまって。ノードステージが欲しい。だれか買って!(笑)

大胆なまでに刺激的、その反面ナイーヴな繊細さを併せ持つ、ちょっとミステリアスなジャズ・ピアニスト高木里代子さんのインプロビゼーションは、弾けるような若さと妖艶なまでの美しさが音楽と融合して、魅力的なサウンドを生み出しています。常にファンを楽しませ、驚かせ、型にはまらない里代子JAZZで独自のスタイルをクリエイトする意気込みは、正にジャズ界の逸材です。セルフ・プロデュースに長けていて、革新的なチャレンジへの賛否をも楽しむ姿はカッコいい男前!話していて、私はすっかり里代子さんのファンになってしまいました。度肝を抜く里代子JAZZ、楽しみでなりません!!

インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:常見登志夫

高木里代子(p&key)/1984年9月20日、東京生まれ。4歳からピアノを学び、慶応大学時代にはライブハウスやクラブで演奏を始める。卒業後、クラブ系ユニット「INNER CITY JAM ORCHESTRA」での演奏が注目される。15年9月「東京JAZZ」に2日間出演、大きな話題になる。16年「ザ・デビュー!」でメジャーデビュー。スタンダードから自作、アコースティックからエレクトロ、スイングからEDMと、全てにおいて振れ幅の大きなエネルギー感で圧倒する。

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