特集

インタビュー Vol.38
妖精のように舞い降りたミュージカル界のシンデレラ Pt.2
宮澤エマ

●昨年の暮れは「ドッグ・ファイト」でエマさんがヒロインでローズ役を見事に演じられましたが、見終わったあとピッタリだなと思いました。チークのメイクがピンク色でキュートでお人形みたいでしたよ。役作りはどんなふうなことを考えながらその役を演じられるのですか?

今まで色んな役を演じてきましたが、ローズという役は、頭も良い部分もあって優しいし、ちょっと中身を知れば、内面から輝くものがある、その彼女の役をやる上で、外見の美しくなさ、イケてなさを表現するのに、後ろのお客様がわかるようなメイクをしなきゃ、と思いました。ライトが当たると飛んじゃうんですが、パーティーに行くのにメイクを盛るのが勝ち!みたいな引き算を知らないのでドンドンお化粧して(笑)赤ら顔という設定でしたが、舞台は全部、自分でメイクをやるんですよ。また、舞台の内容がベトナム戦争で、その歴史をあまり知らない若い女性が多かったのにもかかわらず、ローズという役に共感してくれたり、泣いているお客様も多かったので、逆に若い女性に観てもらってよかったなと思います。やりがいが凄くありました。女性って外見で判断されることが多くて、それって年齢も国籍も関係なく、凄くそれを意識せざるを得ない性別だからこそ、そういう事じゃない自分を見てほしいとか、それ以上のものとか、それ以外のものを見て欲しいっていう気持ちが絶対誰でも経験したことがあると思うので、そういう意味では直ぐにローズの共感できたし、観ている方もとても共感したのだと思います。

●昨年の今頃は帝劇の「Endless SHOCK」にご出演でしたが、あっという間の一年ではなかったでしょうか。あの時は踊っていらっしゃいましたよね。踊れないとおっしゃっていましたが。私はその舞台を拝見して、なんてキュートで美しい声の女優さんだろうと思いました。あの時に一目ぼれしたのです。何とかこの方にジャズを歌ってほしい、と思ってネットを調べましたら、趣味がJAZZって書いてあったので、私は即お願いしました(笑)。趣味が演歌ならお願いできなかったので救われました…。

ショーがメインだったので、あれを見てそう思ってくださって嬉しいです。

●それから「ラ・マンチャの男」でもそうでしたよね。松本幸四郎さん演じるセルバンテスの姪のアントニア役で、素晴らしい役者さんとの共演での緊張感があったと思いますが、あまり歌うシーンはなかったのですけど、強烈な個性を出していらっしゃってました。次は霧矢大夢さん演じるアルドンザ役が目標ですね。

そうですね、いつかやってみたいです。アントニアも凄くいい役なんですよね。私は、幸四郎さんの役を伝える大きな車輪の中の軸というか、それをいかに際立たせるかという役なので、それはそれでやりがいがありました。

●とても透明感のある、ほんと綺麗な声ですよね。

そうですか?自分では全然。喋り声はハスキーなほうだと思いますけど。歌としては、ポップスやジャズを凄く歌っていたので、あまり綺麗に歌うということを心がけてこなかった分、ミュージカルの人は皆さん声楽を習っている人達ばかりで、綺麗に歌っていらっしゃっていますよね。逆にちゃんと歌い上げちゃうと、キャラクターの心情とかが伝えづらいなと思いつつ、あまりお芝居に寄りすぎると聴きづらい部分があると思うので、まだミュージカルは修行の身です。

●ダンスレッスンとかされていますか。

行っていますが、まだダンスの敷居が私には高すぎて。もう少し踊れるようになりたいですね。ジャズダンスとか、バレエも基礎なのでやりたいなと思いつつ。

●やっていることは沢山ありますね。オフの日はどのように過ごされていますか。

出不精というか無趣味な部分が多いので、趣味と言うか仕事にもつながるダンスは続けたいですね。もっと引き出しが多くなりたいなと思って。幸四郎さんがおっしゃっていたのですけど「役者はなんでもやる必要性はないけど、なんでもできるようにならないといけない」って、ああ、そうだなって(笑)。観てるだけで勉強になるって、こういう事なんだろうなって。重ねてきたものがあるからこそ出せる味がありますが、重ねてきたのにもかかわらず、英語の原文の台本を見て「ここどういう意味なの?」って聞いたりするのです。これまで千何百回とやっているのに、さらに人に聞く柔軟性を持ってらっしゃる凄い方なんですよね。魅力的な人ってそれがお芝居に出るんだろうなって。自分もそういう方を見習って、頑張らないとなって思います。

●色々な人に会って色々なことをインプットして良いですね。

父が外交官ということもあって、パーティーとかお食事会に連れて行ってもらうことが多かったのですけど、姉は社交的で人と会うと人からエネルギーを貰うタイプで、逆に私は内向的な子供だったので逆に疲れちゃうというタイプだったんです。私がこの仕事を始めてからは、一日として同じ日がなくて、凄くいろんな人に会えるんだって思えるようになり、人とのご縁で色々なお仕事をさせてもらっているんだなと思いました。結局、人って一人で過ごしていけないというか。

●最近はさらにテレビ出演が多くなりましたね。

舞台をやっていないときはテレビに出演したりというのが続いていますね。テレビなどに出演したことも舞台に還元できるので、あえて世界を狭める必要性はないなとは思っています。テレビだけ私を知った人は、タレントとしてのイメージが強いでしょうから、これからはテレビでも歌を歌ったり、お芝居したりする機会が増えるといいなとは思います。今回のビッグバンド・フェスティバルもそうですけど、歌だけのコンサートは久々ですし、ジャズは好きなのでとても楽しみです。

●司会、コメンテーター、バラエティなど沢山の番組にご出演されていらっしゃいますが、今後はラブストーリーとかも見てみたいです。ドラマのお相手はどなたが良いですか?

誰がいいかな。アイドル以外じゃないと怒られるかもしれませんね(笑)。

●では、どんな役がやりたいですか?

私は身長が小さいというネックがあるのですけど、人が想像し得ない役をやりたいですね(笑)。今までだと、あまり似通っていない役だったのも良かったのかも。いわゆる王道のヒロイン像ではないのが、良かったかなと思います。

●だから色がついていないというか、演出家の色もついていないという。

そうですね、このままの状態でいられたらいいなって思っています。しっかりとした芯を持っていないといけないのでしょうけど。

●デビュー作が2013年の宮本亜門さん×ソンドハイムさんの「メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む~」のメアリー役でしたが、「彼女のおおらかさ、純粋さ、実力はメアリー役にピッタリ」と出演が決まったそうですね。亜門さんってどんな方ですか?

エネルギーの塊みたいな人です。求心力みたいものが強い人で、凄い流れがあるので、それに乗っかるという感じですかね。物事のイメージがビジュアルで決まっている人なんだろうなって。だから自分でやってみせて、私達がそれを真似てみたりするスタイルの演出家の方ですね。私の初舞台だったので、右も左もわからなかったので、何がなんだかわからない感じだったのですけど、そういう中で割と若手が多かったので、部活じゃないですけど、みんな熱くなって、亜門さんも熱くなって、私も泣きましたし、みんな泣いてました(笑)。

●それは悔し涙?隠れて泣いてました?

悔し涙です。私のソロのシーンだったのですけど、言われていることと、自分がやっていることがどう違うのか理解できなくて。何度も何度も「違うな、違うな」と言われて、違うのはわかるのだけどどうしたら理想の形に近付けるのかがわからない。ただ繰り返すだけなんです。何度も。何が正解かわらない。悔しくって、感情が高ぶると泣いてしまって、そんな自分も嫌で、それで時間がきてしまって、実はその日、「シスターアクト」のオーディションがあったんですね。悔しくて「これで受からなかったら向いてないってことだ!」と吹っ切ってやったら受かった(笑)。いま考えると最後までやってよかったなって思っています。亜門さんにお礼を言ったら、「そうだよ、僕は最後まであきらめないからねー」とおっしゃってました。

●さらに人間関係が太く構築されたという感じでしょうかね。

ほんとに怖かったのが、稽古場の稽古最終日で亜門さんが私のところに来て「なんか違うんだよなー、エマ。衣装付き稽古をやってから何かあった?個人的に何かあった?」って。全然何もないんですけど(笑)。で、そういうこと言われると凄い不安になるじゃないですか。その日も凄く落ち込んで帰ったのですけど。でも私も負けず嫌いなので、徹底的にやろうって思いましたね。

●デビューされて何年ですか?

デビューが2012年ですので、4年目ですね。

●この短期間で凄いですね、本当に「Show Must Go On」ですね。今回、ご一緒させていただきとても光栄です。今回ビッグバンドでジャズのスタンダードナンバーやミュージカルナンバーを歌っていただくのですが、ビッグバンドとの共演はございますか?

ケンブリッジ大学に留学していた時にビッグバンドのサークルみたいなのがありまして、そこでジャズを歌っていたりしていました。年度末になると最終試験がありまして、それが大変な試験なんですけど、それが終わるとパーティーが沢山開かれるんです。そのお抱えバンドみたいなのがありまして、色々なパーティーでよく歌っていました。

●全国からジャズファンが集まりますので、エマさんからメッセージをお願いします。

日本のトップの方々と海外からの有名な方も参加されているこのフェスに出演させていただけることをすごく光栄と思いつつ、ジャズを歌うのは久しぶりなので緊張していますけど、先日の音合わせのときにも「この曲をやるんだ」って改めて気持ちが高まりました。ジャズってコール・ポーターのようにミュージカルの基礎になった部分もあって、凄い物語性があって歌詞が美しいし、異世界へ連れていってくれるというのはジャズならではと思うので、ジャズに関しては好きというだけで、まだ勉強できていないんですけど、その魅力を私が少しでもお伝えできればいいなと思います。すごく楽しみです。

2013年にデビューされてからまだそんなに月日は経っていませんが、すでに数多くの有名ミュージカル作品、テレビのバラエティやコメンテーターなどでも大活躍のエマさん。祖父は宮澤喜一元首相という一般的ではない家庭で育ち、まさに才色兼備の帰国子女。宮澤家の家訓は「働かざる者食うべからず」と。
エマさん曰く、このお仕事は一日として同じ日はなく、普通に生きていたら会えないひとも、ひととのご縁のお陰でこのお仕事をさせていただき、色んなひとに会えることが楽しいです。と喜びを語ってくださいました。
エマさんのように、運をつかむのもアーティストの才能ではないでしょうか。
音楽ジャンルで好きなのは、60年代のジャズやブルースのほか、海外に留学していた時にYouTubeでちあきなおみさんの「喝采」を聞いてこんなに凄いソウル・シンガーがいたんだー、と感動されたそうです。 ビッグバンドとの出合いもきっとこれからのエマさんの芸能活動にピュアなエッセンスを添えてくれるのではないでしょうか。

インタビュアー:佐藤美枝子
カメラマン:Koji Ota

許可なく転載・引用することを堅くお断りします。