• 高橋和也
  • インタビュー Vol.11 中川晃教|特集|一般社団法人 日本ポピュラー音楽協会

    特集

    インタビュー Vol.11
    ミュージカル界の貴公子が日本の名門ビッグバンドでジャズを歌う Pt.1
    中川晃教

    ●小学生のころから作曲をなさっていたそうですが。

    ピアノを習い始めたのは、幼稚園の時です。きっかけは三人兄弟の兄の小学校の入学式のときに、家族で食事をしようとホテルに行ったことです。そこにグランドピアノがありまして、それを男性の方が演奏されていたのですよね。それを見て、子供ながらカッコいいなと思って。そして、すかさず母親が「男の子でピアノを弾けると女の子にもてるよ」と言ったので、そんな不純な動機からピアノを習いはじめました。(笑)そのあと、作曲を初めてしたのが小学生の時です。

    ●ステージでも同じことをおっしゃっていましたが、ほんとうなんですかー?

    ほんとうなんです!それでピアノをやりはじめたという。。。
    それで曲をつくりはじめたきっかけというのは、自分の中から沸き起こってくるものを弾くほうが、与えられた譜面を弾くよりも楽しかったということなんですよね。自分の中から沸き起こってくるものだから、正解も不正解もないんです。それをどうすれば自分の音楽にできるのか、ようするにどうすればCDなどになって世の中に出せるのかと考えていたとき・・・、もう自然とデビューしていましたね。それまでは好きだからずーと黙々とやっていたんです。友達と遊ぶよりも、家に帰ってピアノを弾いて曲作りをするほうが好きで、それがそのまま、デビューまでつながってきているから最初は戸惑いましたよね。いろんな意味で。「好きこそものの上手なれ」ではないですが、好きなことだからやり続けることができた。好きなことをやってきたことで「いいよね」とよくいわれたことがあったけど、僕はその言葉がすごく嬉しくて、好きな道をやってこれたことで両親に感謝したりとか、自分のことを見出してくれた周りのスタッフに感謝をするのだけど、同時に、自分の好きなことをやるということには、やっぱりそこには100%のめり込むためには、与えられたチャンスとかまったく自分のキャパシティの中にない、ミュージカルもそのひとつだったりするのだけど、そういうことにチャレンジしていくこと、臆さず気負わずやると。そこから得たものが、すごく自分の自信につながってきたんです。すごくシンプルに、自分がやりたいことをやりたい、というのは変わらないのだけど、でも実際に色々な経験をすることによって、確実に自分自身のキャパシティが広がったなと思っています。すごく自分にとっていいことだと思います。もう30歳になり、十何年間やってきましたが、やってきたことは間違っていなかったなと思っていますね。

    ●アッキーにとって演劇とか、歌とかの師匠はいらっしゃるのですか?

    うーん、恩師というと高校の先生とか・・・、普通の担任の先生なんですけどね。音楽は・・・、そう思うと、あんまり師匠と思っているというよりは、いろいろ学んできた人はたくさんいますね。また、相手は教えてくれているつもりはないかもしれないけど、身近でその人の芸を盗むという意味では共演してきた人とか、それこそデビューしたときのプロデューサーとかね。そういう人たちの言葉って今でもやっぱりいい意味でとらわれていますよね。

    ●出会いからして、全部を運に変えていって、最初から運が自分のほうに向いていてくれたんじゃないかって思うほどラッキーボーイですよね。

    どうなんでしょうか?(笑)自分ではよくわからないです。むしろ出会ったものを縁でつないでいくようにはしています。もし、ラッキーボーイと思っていただけるんだとしたら、そういうまわりの人に助けられているんだと思います。

    ●俳優としてのデビュー作が、『ミュージカル モーツアルト』という大役を果たされ、文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞や、読売演劇大賞杉村春子賞、月刊ミュージカル男優部門第1位など沢山の賞を受賞され、いきなりスターダムにいっちゃったわけですね。苦節なく、現在に至っていらっしゃるのですよね〜

    いやいや、苦節ばかりです(笑)。
    あんまり考えすぎると良くないんです、僕の場合は。考えするぎると出口のない迷路に入ってしまうってことを実感したんです。だから、考えすぎない!ということはすごく心がけています。でも、突き詰めないと自分の中から面白いものがでないと思うのです。それがクリエイティブだと思うのです。常にそこには剣先が尖がっていて、もしかすると、自分に近づいてきた人には無意識のうちに傷ついてしまうかもしれないけども、でも自分の直感とかは、信じています。突き詰めていきたいものを遠慮していると、やりたいことも人も同時に失ってしまう気がして、これまた何のやりがいもないとかになってしまう。悩みすぎないと言っておきながらも、すごく考える時間がほしいし、それがなによりも自分にとってのクリエイティブなので、そこがどういう瞬間に言葉になったり、歌になったり、感情となって音楽に反映され、ステージに立つ自分にも空気として反映されたり。そう思ったのも、色々な俳優さん方々を見ていると、面白いよね、普通の人とやっぱり違うような気がします。音楽もそうだけど。どこか普通じゃないんですよね。どこか普通じゃない感じというのが、やっぱり僕も、同じように自分が感じることには、すごく貪欲に感じてしまう自分がいます。それを閉鎖的な空気をまとっているひともいれば、とってもオープンで親しみやすいんだけれども、実際にその親しみに触れた瞬間に、すごくそこにはピリっとスパイスが効いている人もいます。この人、こういうこと考えているんだ、こんなことに反応するんだって、意外なものをもらったり。なんかそういう周りのひとたちから、自分は自分でいいんだ、って思うようになって、先ほどもいいましたが、自分でよいと思ったことは臆さずやろうと思いましたよね。なんか殻にこもっている自分と、そうじゃなくてオープンでなんでもやりたいと思う自分とのバランスというのが、中川晃教っていうものなんだと思ったりしています。

    ●自分のポリシーをしっかりとお持ちになっていて、しかも繊細。そして哲学的に、その発する言葉が詩になっているような気がしてくるんです。このままメロディーをつけたら曲になっちゃうなと、いま思ったのですけど。2001年のデビュー曲「Will Get Your Kiss」は、素敵なラブソングですけど、あの切ない感じをアッキーが歌詞を作って。。。どういう心境のときだったのだろう?って思っていたのですが。

    ぼくもあんまり憶えてないですが。(笑) 今と変わらないと思う。いまのこのままだと思う。あの曲を書いた時の気持ちは、今の自分も同じように感じることがあります。本当にああいう風に思ったんだよね。

    ●恋をしてた?

    恋はしてたでしょうね。

    ●あ、いいなぁ〜。そうですよね、でも早熟ですね?

    高校ですよ!高校生で早熟かな?(笑)

    ●あの歌を聴くと、本当に大人の成熟した愛を歌っているような感じがしたので。あとアッキーの魅力としては、ファッションにしても、スタイルだとか、いまこのテーブルを拭いたとか(笑)、とても細やかな気配りをしているところが男性なのに中性的な魅力がありますよね。そこがまたセクシーだったり。。。女性だけでなく男性にも好かれますよね。先日のライブでも男性のファンの方が多かったと思います。

    なんか、面白いって思ってもらえるのが僕としては嬉しいですね。この人なんなんだろうって思ってもらえるのが嬉しくて。異性からも思ってもらえるのも嬉しいけど、いまの感覚からすると同性から思われるのが面白くて、同じ性だけど自分と違う、っていうものにすごく敏感な人っていると思いますよね。男性のファンが客席にいてどう思っているのかとても気になるのですよ。純粋に歌が好きって思ってくださる男性ファンが多いのですが、奥さんに連れてこられて、ついはまっちゃったみたいな方がいるんだよね。(笑)あとは、彼女と一緒にコンサートに来たりとかね。会場でサイン会や握手会をやったりすることがあるのだけれど、カップルできた男性は、最初は恥ずかしがっているのですけど、握手するときはガッと手を強く握って「凄いよかったです!」と言われたり(笑)。世の中ってよく出来ているなと思うのですが、男と女が良いと思うモノってあるんだよね。うまく言えないんだけど、それが音楽だったり。あまり中性的って意識して作っていないけど。女性のことは凄く好きだし、女性に対する尊敬って凄くあるし。。。

    それは母親からきていると思うんだよね。ある日、自分の住んでいた家の隣の家の石垣に綺麗なバラが咲いていたのですよ。バラの季節になると凄く綺麗でいい香りで。淡いピンクのバラなんだよね。それが凄い綺麗で手折ってお母さんにあげたいと思ったのですよ。子供ながらに。でなかなか手折れなくて、強い力でようやく手折れて、それを母親にあげたの。それを母親は「ありがとう」って言ってくれたのだけど、「でもこれは他人のうちのものでしょ、しかも綺麗な花をそうやって乱暴に手折ったら他の花に傷つくでしょう。嬉しいけど、それはやってはいけないことなんだよ」と言われて、そのときすっごいショックを受けたの。喜ばせたいと思ってやったのに、それがそうじゃなくて、「あ、そうか」と。言われたことは確かにそうだなって思ったんだよね。良かれと思ってやったことがそうじゃなかった、ということを異性から初めて指摘されたんだよね。その言われたときに、女性ってすごいなって。

    そのあとにデビューしてから同い年の帰国子女の子がいて、その子はファッションの仕事をしていて、フランスによくコレクションに連れて行ってくれたのですよね。それでフランスに行ったある朝、その子と朝食を一緒に食べていたとき、僕が新聞か本を読んでいたのですよ。そうしたらいきなり怒り出したのですよ。なんで怒るのかなと思ったら、一緒に食べてるのにそれは失礼だと言われたのですよね。その瞬間に「なに?なんでそんな風に思うの?」と思ったのですよ。男と違う感覚をあきらかに持っているし、その感覚は正しいと思ったの。そう思ったとき、女性ってすごいなって。。。女性に対する絶対的な尊敬っていうのがあって、その尊敬があるけど、男としてそうじゃないんだ、という男としての主張もあるし、それを男と女という枠だけの話ではなくて、日常生活の中でもそういうのがあって、その人の気持ちの交差ってあると思うのですよね。そういうのが僕の歌詞の中にあらわれてきて、そこで生まれた感情が人を好きになったり、恋をするとか、守りたいとか、守られたいとか、傷ついたとか、傷つけたとか。。。それが身近なことが、世界に広がっていって、もっといろんなことが見えてきて、自分の知らないものがそこにはたくさんあって、自分がちっぽけに思えてきて、自分の言葉があまり意味をなさないように思えてきて、そして自分ってなんなの?ってなったとき、誰にも負けない力が自分にはあると思えてきて、その力を毎回歌やステージに注ぎ込むことでなんかはじめて、循環というか、自分が成り立っているというか。

    若きヒーロー!中川晃教さんにサマージャズに向けてのアッキー流音楽論をインタビューいたしました。ロングインタビューにつき、2回にわけておとどけいたします。Pt.2は8月9日(金)に掲載いたします。

    インタビュアー:佐藤美枝子
    カメラマン:Koji Ota

    許可なく転載・引用することを堅くお断りします。