インタビュー Vol.107
 

ミュージカルを愛し、ミュージカルに愛され
作品に生きることが僕の生き甲斐

小野田龍之介

 

 

小野田さんは沢山のグランド・ミュージカルに出演されていらっしゃいますが、ご自身が思う代表作はどの作品ですか

やはりひとつ選ぶのは難しいですが、「ミス・サイゴン」(クリス役)と「マチルダ」(ミス・トランチブル校長役)「ウエスト・サイド・ストーリー」ですね。「ウエスト・サイド・ストーリー」はトニー役とリフ役をそれぞれ演じさせていただきました。
トニーは劇団四季で上演した時に外部からのゲスト出演をさせていただきました。
クラシックの強いイメージがありますから、歌のスペシャリストたちが海外でやっている印象が強く、この作品にまさか自分が出られるとは思ってもみなかったですが、面白いからトライしてみようかなと思い、出演させていただきました。作品的には結構重たいので、トニーを演じることが精神的にはかなり辛かったですね。初演の鹿賀丈史さんやそのあとの山口祐一郎さんなどの大先輩が演じてこられた作品でもありますし、プレッシャーを強く感じながら演じていました。
そうそう、そのときは先輩の衣装が残っているのは着させていただいていました。鹿賀丈史さんの衣装は無かったのですが、山口祐一郎さんのは衣装さんにお願いして僕のサイズにリメイクしてもらい、本番にはそれを着させていただき、演じておりました。鈴木壮麻さん(当時の芸名は芥川英司さん)の衣装も、当時は「芥川」と書かれていた衣装をリメイクして着させていただいたりとか、先輩のパワーを衣装から感じ取り、芝居にも活かせていたと思います。
「レ・ミゼラブル」もアンジョルラス役とジャベール役を演じさせていただきましたが、この作品は代表作というよりも、沢山観てきた作品なので、今自分が出演していることがとても不思議な感覚ですね。
そうそう、ジャベールを演った時は村井國夫さんから「龍之介もついにジャベールか!」と励ましていただき、[村井國夫]のシールが貼ってあるご自分の資料など「俺もう読まないから龍之介に全部あげるよ!」って、全て貰いました。僕は子供の頃から本当に長い間、お世話になっていますので、尊敬する大先輩からの貴重な宝物は今も大切にしています。
 

小野田龍之介
 
ミュージカル「Les Misérables」 2024年12月~2025年6月
 

ミュージカル俳優としてのデビューは

25年前になりますから僕が9歳の頃ですね。オリジナル・ミュージカル「キャットウォーク」(2001年上演)という作品で元宝塚歌劇団雪組トップスターの平みちさん主演でした。そして本作品を企画していたブロードウェイでも活躍されていた日系人の中川久美さんが僕のダンスの師匠で中川さんから「ミュージカルに出てみない?」とお声がけくださり、それがミュージカルに出るきっかけですね。
でも母に聞くと僕は幼少期に雑誌などにも出ていたようなのですが、 まだ幼かったので、自分では良く覚えていませんが(笑)
 

ダンスが始まりだったそうですね

ディズニーダンサーやNHK「おかあさんといっしょ」の体操のお兄さんになりたかったのですが..
まさか自分が人前で歌うとは思ってもいませんでしたね~
母がダンサーだったこともあり、色々と理解してくれて、芸事優先の生活をさせてもらっていました。
子供の頃からミュージカルは良く観に行っていましたので、気が付いたら今自分がその世界にいるってことが不思議ですね。でもひとつだけ自慢できるとすると、子役から演っていると、途中にブランクがあったり、変声期が来たり、学校の進学とか環境の変化で辞めざるを得なくなるケースもある中、僕自身はブランクもなく、本当に好きなことを続けられていることには幸せです。
 

小野田龍之介

 

スランプはなかったですか

毎回悩むことや不安なことは沢山ありますが、スランプに堕ち入りそうになった時は自分を捨てて、作品の中だけに生きようと思うように努めています。例えば、スコア通りに歌おうとか、そうすることによって、自然といつも作品が助けてくれるような気がします。そう思うと毎回、演劇に助けられている俳優人生ですね。
 

小野田龍之介

 
 

沢山のグランドミュージカルの大役を努めてのご感想は

僕は本当に運が強いと思っています。様々な作品と出会い、それに加えて代表作と言って頂ける役や作品と巡り合うことができて。
特に「ミス・サイゴン」は僕にとっての特別な作品ですね。どの作品でも「再演でまた~」って言われても、終わったら一旦は区切りを付けたくなるんですが、サイゴンだけは、やっていると時はメチャクチャ苦しくて、ちょっと鬱状態にもなりそうなほど大変な役なのですが、もうすぐ終わりに近くなってくると思うと、この作品の豊さや役の豊さに生かされて、もうちょっと彼(クリス)の人生を歩んでみたいな、って思うので、俳優として巡り会うものに出逢えたんだなって思えるのは「ミス・サイゴン」ですね。
あとは「マチルダ」のトランチブル校長先生役はトリッキーな役ではありましたが、とても楽しく演らせていただきました。向こうのシェイクスピア・カンパニーが凄く喜んでくださり、その若さで日本語で、ウエストエンドと全く同じに演じてくれてありがとう!と言っていただき、ウエストエンドに持って帰りたいとまで言っていただきました!(笑) 「これはやったー!!」って思いましたし嬉しかったですね!
 

ミュージカル「ミス・サイゴン」[日本初演30周年記念公演] 2022年7月~11月

 

 

ミュージカル「マチルダ」2023年3月~5月

 

海外進出への野望は

海外の作品を日本で上演することが多いですし、僕自身も良い作品には沢山携われたらと思っていますが、
海外作品は言葉の情報が少なかったり、歌い辛かったりとかのハードルはあります。それをどうやって、本国を超える日本版を作れるのかということを毎回思うのです..
だからこそ日本でのミュージカルが辞められないし、海外に行ったらどう?って言われますが、やり辛いからこそ、豊かな気持ちで日本での海外ミュージカルをやりたいと思いますね。
 

小野田龍之介
 
ミュージカル「黒執事 ~緑の魔女と人狼の森~」2025年9月

 

9月から大阪~東京とミュージカル「黒執事 ~緑の魔女と人狼の森~」が上演されますが

2.5次元ミュージカル作品は過去には「西遊記歌劇伝」「テニスの王子様」とかにも出演しましたが、ミュージカル「黒執事」~緑の魔女と人狼の森~(ヴォルフラム・ゲルツァー役)は初めての出演になりますが、2.5次元と言っても自分が10代~20代で携わってきた頃とは歴史が変わっていて、特に製作陣がすごく皆さん若く、僕が演じていいた頃に観ていた人もいるわけですよ..
僕自身まだ若いのですが、彼らからすると凄く昔の人がきたみたいな雰囲気で、小野田龍之介ってまだいたんだ!!(笑)みたいなように思われているかもしれませんね~(笑)僕が10代で出演していた頃のブロマイドを稽古場の着登板の横に掛けられていて(笑)「なんでやねん!」って感じですが嬉しいですが、
スタッフの心遣いにちょっと恥ずかしいですよ~(笑)今回の演出家も僕が高校生の時に一緒にやったことのある人で、初めての作品でも初めて感じがしなくて、お稽古も楽しく演らせていただいています。
 

小野田龍之介

 

色々な役柄を演じられるときのご自身のモチベーションを切り替えていくにはどう心がけていらっしゃいますか

色んな作品を演っているから逆に切り替えが必要ないというか、これも運かなと思いますが、若いうちから割と年齢の高い役を演ってきていたので、そんなことを任して貰えるということは本当に有り難いと思います。とは言え、心が老いて行かないように心がけています。でもそもそも演劇やミュージカルが好きなので、辛くなったら、他の人の舞台を観に行ったり、映画を見たり、本を読んだりしていると一気に切り替わるので、そこでリフレッシュしていますね。これが僕のエネルギーです!好きだからやっている!に尽きますね。
 

帝国劇場にまつわるすごい記録をお持ちだとか

実は僕、子役ではなくて男性の大人キャストの15歳という帝国劇場の最年少記録を持っているんですよ。
それまでは18歳以上じゃないと出演出来なかったのですが、当時のプロデューサーと演出の宮本亞門さんがミュージカル「ルドルフ・ザ・ラスト・キス」という作品の日本初演に出させてもらって「学校は大丈夫なの?東宝は18歳以上じゃないと出演出来ないのだけど、今回は例外でぜひ出てください」と言われて、出演させていただきました。
 

帝国劇場のクロージングコンサートは感動的でした

そうですね。20代から通わせてもらったこの劇場がいよいよなくなるんだと思うと、このコンサートのトリを務めさせていただけることは本当に有り難いことですし、毎日、色んな方々が観に来られて、励ましの言葉をかけていただくと「小野田くんは本当に劇場が好きなんだね!心の底からミュージカルを愛していることが伝わる」って言っていただけたことは嬉しかったですね。
 

CONCERT
THE BEST. New HISTORY COMING 2025年2月
@帝国劇場 パンフレット

 

小野田龍之介
 

最後に Gift of Classics & Musicals にお越しいただくファンの皆様へメッセージをお願いします

どんな曲が登場するかは、当日のお楽しみですが、僕自身、共演者の歌声もとても楽しみにしています。ピアノとパーカッションだけのシンプルな音の世界で、壮大な曲や静かなバラードなど、普段ミュージカルで聴く感覚とはまた一味違った歌声を感じていただき、クラシックもなかなか聴くことがないかもしれませんので、好きな音楽を心に残していただけるよう精一杯歌いますのでご期待ください。

幼少期からダンスとともに舞台経験を積み、2011年には「シルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンサート・コンクール」で “リーヴァイ特別賞” を受賞 。音楽性を軸に据えた表現へのこだわりは、『ミス・サイゴン』でも “叫び” を敢えて控え、“音楽の中で表現する” 俳優さんだと思います。そして『レ・ミゼラブル』で演じたアンジョルラスについて「舞台に立つたびに怖かった」と語るほど責任と緊張感を持って演じきり、その背後には役の人間性に真摯に向き合う姿勢が素晴らしいと思います。コミカルな役から重厚なヒーローまで幅広く演じ分けられる柔軟さも魅力です。例えば、初演『メリー・ポピンズ』ではユーモアあふれるロバートソン・アイ役に挑戦し、“ ポップ”な役にも楽しみながら取り組む一方で 『マチルダ』では抑えた狂気を含むミス・トランチブル校長を、豊かな演技力とコミカルさで演じ分けています。
どの役にも日常的な “ 当たり前 ” を延長する形でリアリティを持たせようとする意識を持ち「日常にいる人の“拡大版 ”が舞台上に乗る」と考え、その姿勢を自らの武器とする誠実さが小野田龍之介さんの最大の強みではないかと思います。ミュージカルへの誠実な愛で、観客を惹きつけてやまない小野田さんは私たちの心を明るく照らしてくれる神秘の歌声です!
そして、今回共演のLENさんとはミュージカル『洗濯「パルレ』で共にソロンゴ役を演じた共通点があります。LENさんが初演で、小野田さんが再演の時です。初顔合わせは今回のGift of Classics & Musicalsとなります。ここでも何かが起こりそう?!

 
インタビュアー:佐藤美枝子
撮影:間野真由美
取材協力:
許可なく転載・引用することを堅くお断りします。
小野田龍之介

小野田龍之介

おのだ・りゅうのすけ/神奈川県出身。
幼少より経験を重ね、確固たる演技力・幼少より培ったダンス力・圧倒的な歌唱力を武器にミュージカルを中心に活躍。 2011年「第1回シルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンサート・コンクール」にてリーヴァイ特別賞を受賞。近年の主な出演作に『レ・ミゼラブル』(ジャベール/アンジョルラス)、『ミス・サイゴン』(クリス)、『West Side Story』(トニー/リフ)、『メリー・ポピンズ』(バート/ロバートソン・アイ)、『マチルダ』(ミス・トランチブル校長)、『ラブ・ネバー・ダイ』(ラウル・シャニュイ子爵)、『マリー・アントワネット』(オルレアン公)、『ベートーヴェン』(カスパール・ヴァン・ベートーヴェン)、『ピーター・パン』(フック船長)など多数。9月にはミュージカル「黒執事」~緑の魔女と人狼の森~」にてヴォルフラム・ゲルツァー役で大阪・東京公演に出演予定。


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◎今後の主な予定
2025年12月25日 小野田龍之介ディナーショー 
2026年3月〜ミュージカル「メリー・ポピンズ」